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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

今日利用している福祉施設に行く途中で牛乳屋から電話があった。ああついに来た。父親が配達してもらっていた牛乳屋さんで、代金が未払いになっている。弟が相続するなら弟が払えばいいのだが、相続放棄するなら一切払ってはいけない。「父親が払うはずだったものを少しでも払ってしまったら、その時点で負債を相続したことになる」ので、まだ払ってはいけないのだ。ちょっと面倒だな。

電話の向こう側では「あの~代金をお支払いいただいてないのですが」という人の良さそうなおっちゃんの声が。まだ払うわけにはいかないので、「内輪のことで恐縮ですが、相続関係のことでごたごたしてまして、全てのお支払いを待ってもらうように言われてまして」と話しておいたのだが、実家の近くに配達に来たついでにまた集金に来るかもなあ。弟が相続するかどうかはまだ決まっていないのだが、相続放棄したら今のおっちゃんにも「払えません」と言うしかないんだろうなあ。そういうのが気が重たくて、先週は疲れも残ってて頭がパニックになった。友達に電話して話を聞いてもらってかなり気が楽になったのだが、それでもまだ気が重い。自分の性格なんだろうな、こういうのは。立場上しかたがなくとも、こちらの言い分が間違っているというわけでもないのに、相手が困るようなことを話さないといけないのがとても精神的な負担になるのだ。

昔私がITエンジニアとして働いていた頃の話だが、うちで作ったシステムが不具合を起こし、お客様に迷惑をかけてしまったことがある。原因を調査したら、プログラムの内部で呼び出しているWindowsの機能(API)が予想外の挙動をしていたのが不具合の理由だとわかった。そうとわかったとたん、会社側からは「絶対にマイクロソフトのせいにしろ」というお達しが出た。うちの非は認めるな、ということである。

しかし、それは実際にはそのAPIの問題ではなく、Windowsのシステム仕様を自分たちが少し誤解していたのが原因であった。そういう使い方をするなどとはマイクロソフトも想定してなかっただろう。しかし、「そういう使い方をしてはいけないとマニュアルにはどこにも書いてなかった」ということでマイクロソフトを悪者にしろ、というのが上からの命令である。正直「電子レンジで猫を温めるなとはどこにも書いてなかった」レベルのいちゃもんに近い。

その交渉は、そこの担当であった自分がやることになった。その箇所を作ったのは私ではなく前任者なのだが、ともかくマイクロソフトにいちゃもんをつける電話をかけて「お宅のせいでプログラムが誤作動してお客様に損害を与えた。どうしてくれる。これはWindowsの不具合ですよね」という話を始めた。向こうはびっくりして「いや、そういう使い方をされるというのは想定外で、それはそういう仕様でして、不具合ではありません」と主張する。

当たり前である。

向こうはそう言ってますけど、と上司に言うが「絶対に負けるな」と言われるだけ。マイクロソフトの担当者も困っただろう。その担当者の一存で世界中で使われているWindowsの不具合を認めるわけにはいかないし、向こうもまた上の人に相談しているだろうし、アメリカまで話が行ったかもしれない。日本だけで使われているOSではないのだ。不具合かどうかの判断は日本で決定されるわけではないと思う。

1週間くらい戦っただろうか、ようやく渋々マイクロソフト側が折れた。Windowsの不具合一覧に「電子レンジで猫は温めないでください」的なことを記載してもらい、客先にはそれを提示することでうちの会社の責任逃れをする、という阿漕なことになった。

私が鬱を発症したのはちょうどこの頃である。長時間の通勤ラッシュ、長時間労働、いろんなプレッシャー、原因はいろいろあるだろうが、このやり取りでかなり消耗してしまったのも心労の一つだと思っている。

この件は完全にこちらの言いがかりだったが、今回の代金の支払いの場合は、相続放棄したら法的にはこちらが払う必要のないもので、間違ったことを言うわけではない。マイクロソフトの件みたいに「電子レンジに猫を」のような言いがかりをつけるわけではない。しかしこちらの筋が通っている場合でさえ、相手が困ることを自分が要求するのは精神的に負担なのだ。電話の向こう側にいる人に対して鬼になれない。考えただけでも気が重い。

間違ったことを主張するわけではないし、友達には「きちんと主張して事情を話すことが相手のためにもなる」「お客さんが突然引っ越したりだとか、会社だって個人でやってるところだって、貸し倒れのリスクは当然わかってるし、気にしないでいい」と言われた。それはわかってるのだが。う~ん、自分は人に甘すぎるのか、気が弱いのか、なんなんだろうなあ。

いったん気が楽になったのに、やっぱり実際に電話がかかってきたら「どこにでもいい顔をしてへらへらしている自分」が顔を出す。「ノーと言えない自分」に繋がるところなんだろうな。これは相変わらず自分の課題。

この牛乳屋はこれからの戦いの幕開けに過ぎない。相手とではなく自分との戦いである。兄に連絡したら、兄のところには新聞屋の請求が来てるらしい。これからどんどんこういうのが来るのを覚悟しなければ。


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