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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

カテゴリー:メンタルヘルス

今日も朝起きれなかった。

6:00の起床を知らせる放送が入ったときは熟睡期だったのだろうか、無理矢理目を覚まさせられて、ものすごくつらかった。ぜんぜん起きあがれなかった。そのまま寝てしまった。ラジオ体操の音は覚えてない。寝ていたのだろう。「朝のお薬でーす」の声は覚えている。その間「起きないと」「でも寝ていたい」の思いがぶつかり合い、ずっと寝ていた。気合いを入れれば起きれそうだったが、気合いを入れる気力がなかった。結局、7:00の朝食の時間になって、なんとか起きることができ、出ていった。廊下でSさんに「ふらふらだね」と言われた。まだ半分寝ていた。

朝食後も少し横になったあと、8:00頃にオカリナを吹きに音楽堂へ。今日は技術的に少し難しい部分をちょっと念入りに練習した。昨日ほど寒くはないが、空気は冷たかった。喉に少し痛みを感じたので、戻ってきてからうがいをした。いつもうがい薬でうがいをすればいいというものではないらしいので、水だけでうがいした。昨日看護婦に「予防のためにうがい薬は出してもらえませんか」と尋ねると、「うがい薬も『薬』なので、あまり使いすぎると耐性ができてしまうので、普段は水でうがいするだけで十分」と言われたのだ。

ホールへ行ってタバコを吸っていると、いつもコーラを飲んでいるUさんが珍しく「午後の紅茶」を飲んでいる。「珍しいもの飲んでいますね」と言うと「またコーラ盗られたから」と言う。おいおいまたかよ。「やな病棟だね~」とUさんは言うが、本当にやだなあ。いったい誰だろう。何とか自衛策はないものだろうか。

作業棟へ行っていつもの通り体力テストと一般トレーニングを30分2セット。また最高値が出た。いつもよりさらに低くさばを読んで年齢を設定したからターゲット心拍数が高く設定されたためであろう。しかし、負荷があがって足は疲れるものの、息がきれるということは全く感じない。私の年齢でこの心拍数では相当苦しいはずなのだが。それにしても体脂肪率は減らない、というかこのところ少し上昇傾向だ。なぜだ?まあ誤差の範囲かもしれないが。

漕いでいる途中、隣のWさんから閉鎖病棟のS君の話を聞いた。同じ時間に閉鎖病棟から作業療法に来ているおばさんから聞いたらしいが、S君はみんなに甘えているという。ここ開放病棟は自由にさせている分看護婦は厳しいが、閉鎖病棟は重症患者が多いので逆に看護婦は優しいという。かえって甘え癖がついて帰ってくるのではないだろうか。

病棟に戻って明日からの外泊届けを出す。いよいよ明後日は情報処理技術者試験だ。2泊の外泊ははじめてだが、大丈夫かな?

昼食時、3週間の実習を終えた看護実習生が「お世話になりました」と挨拶をしていた。立派な看護婦になってほしいものだ。できれば学生たちに「社会人になるにあたっての心得」なんかを話したかったが、その時間はなかった。自分のペースで行動している自分にとって、あまり実習生たちと接する機会はなかった。

入浴を挟んで16:00まで日経コンピュータを読む。広告で明後日の試験に役立ちそうな本を見つけ、しまったもっと早く知っていれば買ったのに、と思う。今からでも遅くない。明日は夕方病院を出て家に直行する予定だったが、それを変更して朝から出るように変更させてもらった。途中でこの本を買っていって、明日は帰ってからその本を読もう。

16:00からはいつも通りリラックス体操。そして自律訓練法。最近便通が安定してきたが、自律神経のバランスがよくなってきたのだろうか。

夕食後、朝刊を読む。最近新聞もまともに読んでなくて、日本人でノーベル賞受賞者が出たこともはじめて知った。東京の渋谷に精神障害者の就労を応援するセンターができたらしい。こんな繁華街にできるのははじめてで、しかも市区町村単独で作るのもはじめてらしい。このようなセンターが各所にできて、精神障害者がよりスムーズに社会復帰できるようになればいいな、と思う。それにはやはり社会の偏見を取り除いていかないといけないだろう。

テレビでメジャーリーグの試合を放送している。マリナーズ対ヤンキースで、マリナーズが2-3で負けている。マリナーズの攻撃で、2アウト2塁の場面でイチローに打席がまわってきたが、なんと敬遠された。ブーイングの嵐だが、イチローはそれだけメジャーでも一目置かれているということだろう。

今日は結局セキュリティの勉強はしなかったなぁ。まあいいや。日経コンピュータは2冊半読んでしまった。興味のある記事だけ拾い読みするつもりが、結局どれもこれも興味があって、ほとんど全部読んでしまってる。さくさく捨てていこうと思っているのに、また昨日新しいのが来た。日経オープンシステムや日経バイトも含めて山積みになっているや。

さて、今日はこの辺にして、そろそろ就寝準備に入ろう。

昨日主治医に「ぐっすり眠れて夜中目が覚めなくなりました」と言ったところなのに、昨晩は目が覚めてしまった。時計を見ると4:30だった。まあそれまで結構眠っているのでいいけど。それよりも寝付きが昨日も悪かったのが気になる。昨日もCD1枚分終わっても寝付けなかった。そんなことしばらくなかったのに、前より寝付きが悪くなってるじゃないか。なんでなんだろう。昨日と一昨日の違いと言えば、一昨日は作業療法でエアロバイクを漕いだので肉体的な疲労があった、という点だ。昨日買った雑誌にも、快眠のコツは「肉体的に適度に疲労させること」と書いてあった。運動不足はいかんなあ。とは言え、雨も降っていたし、毎日何か運動できるとも限らない。今までは運動しない日でも寝付きがよかったのに。まあ、考え出すときりがないのでやめておこう。

ホールへ行ってペットボトルのお茶を飲もうとしたら、いくら探してもない。やられた。前々から「冷蔵庫の中の飲料が誰かに飲まれる」という事件が多発しているのだ。みんなもちろん名前を書いて入れていて、飲むときには自分のものか確認して飲むことになっている。他の病棟では「盗癖」のある患者もいて、冷蔵庫だけでなく他のものもなくなったりするらしいが、ここの病棟では冷蔵庫だけなので、多分確信犯でなければ「ここはどこ?私は誰?」状態のような人が勝手に飲んでしまうのだろうが、それにしてもなんとかならないのだろうか。この間もUさんが連絡会で「なんとか対策はないんでしょうか」と言っていた。冷蔵庫に見張り番をつけるわけにはいかないし、自衛策はないだろうか。

朝食後、なんだかまだぼ~っとしている。鼻水も出る。眠剤が残っているのか、また体調を崩しかけているのかは判断できない。雨も降っていることだし、散歩もどうせ行けないので布団に潜り込んでCDをかけて寝る。

9:00頃に起きて売店に行ったら、外はすごく寒かった。鼻水はまだ出ている。今日は体育館レクだ。参加しようかどうしよっかな。

結局体育館レクに参加した。最近若手が次々と退院して、平均年齢があがっているものの、なかなか白熱して楽しい。「レクリエーションですから、あまりムキにならないように」と看護士は言うが、ドッヂボールはついむきになってしまう。レクの帰り、閉鎖病棟の廊下の窓からS君が顔を見せていた。窓まで近寄って話そうとするが、ものすごく厚いガラスらしく、声が聞こえない。閉鎖病棟はかなり厳重のようだ。「戻って来いよ!」聞こえないだろうが声をかけて病棟に戻る。

昼食後、昨日と同じように勉強はあまり気が進まず、日経コンピュータの記事を読む。テキストマイニングやらJ2EEに対応した新アプリ・サーバーやら巨大データシステムやら、おもしろい記事がたくさん載っている。セキュリティがらみで参考になるものもあるが、仕事のためというよりほとんど趣味の本を読む感覚で読んでいる。

14:00頃、飲料を買いに売店に行ったら、外はすごく寒い。かなり雨が降っている。ペットボトルのお茶を朝買ったばかりだが、体育館レクで汗をかいて結構飲んでしまったのと、昨日買っておいた分が盗られたので残り少なくなっていた。風邪をひかないように気をつけなければ。

午後はずっと日経コンピュータを読んですごす。2冊読んで捨てた。リラックス体操もなんだか気乗りがしなくてパスした。なんだか全体的に低空飛行だ。気温がいきなり下がったり、雨が降ったりと、環境的要因も大きいのかもしれない。「雨の日は雨の中を」ではないが、それなりに無理をしないで過ごすことにする。日経コンピュータも斜め読みだ。

なんと日経コンピュータの「読者の声」欄に、「IT技術者のストレス病」という特集があった。うつ病や神経症、不眠症、燃え尽き症候群などの「心の病」にかかったことのあるIT技術者は33%もいるという。読者からの報告では、いろいろな「事例」があげられていて、「IT技術者は使い捨て」とか「うつ病でリストラ対象に」など、まぢ?という感じである。うちの会社はかなり恵まれている方だ。思わずスクラップして、「医療情報」の封筒に入れる。

20:10をまわった。そろそろ就寝準備をしよう。全然勉強してないけど、なんだかどうでもよくなってきた。まあ気が向けば明日やろう。急に寒くなったので体調管理に気をつけなければ。

昨日は寝付きが悪かった。寝るときに軽い尿意をもよおしていて、ベッドに入ってからトイレに行こうかどうか迷って、まあいいやと思っていたが、結局21:40頃トイレに行った。今まではそれくらいの時間までには寝付いていたのに、寝付けなかったのでトイレにいったのだ。最近は寝るときにオカリナのCDを聞いているのだが、聞き慣れない曲が聞こえてきた。多分その曲に入るまでにいつも寝付いているのだろうが、昨日はCD1枚終わっても寝付けなかった。寝付いたのは22:00をまわってからだろう。巡回の懐中電灯の灯りを感じたのを覚えている。

その後はけっこうよく眠れたと思う。夜中目が覚めた記憶はない。5:30頃目が覚めた。昨日の連絡会でEさんが「夜中に歩く人のスリッパの音がうるさいし、起床前の洗面所でもうるさい人がいます」と言ってみんなに注意を促していたにも関わらず、洗面所ででかい声で話しているおばさん連中がいる。このおばさん達はいつもうるさい。と思ったらYさんが出ていって「うるさいよ」と注意した。私は目が覚めてしまったので、「朝のヨーガ」をだらだらとやる。ちゃんとポーズを覚えてないので適当だ。伸びをすると気持ちがいい。6:00ちょっと前に起きて洗面を済まして着替えた。

朝の服薬で並んでいたら、後ろからIさんが「おはよう」と声をかけてきてくれた。「暖かそうな格好してますね」と言う。確かに私はサマーセーターの上からパーカーを着込んでいるのに対し、彼女はTシャツ一枚だ。「寒くない?」そう言うと「寒くないよ」と答える。「俺、こんなに寒がりだったかなあ」と言うと「歳とったんじゃない?」と彼女は冗談めかして言う。

朝食後、8:20頃までCDを聞いた後、さっさとシーツ交換を済ませてオカリナを吹きに行く。台風の影響で今日は雨模様だ。今は雨が降ってないけど、夜のうちに降ったらしい。ズボンが汚れるのが嫌なので、今日は山道を歩かずにグランドで吹いた。

9:00頃から勉強をしようとしたが、文字を追っても内容が頭に入ってこない。どうも調子がよくない、というか、やはり眠剤が残っているのだろうか。主治医が来たら面談をお願いしたい、と看護婦にお願いしておいた。おとなしくCDを聴きながら寝ることにする。

10:00頃、いつの間にかバケツと雑巾が出ていたので、さっさと周りの拭き掃除をして、また音楽を聴いてすごす。

11:00の服薬後、売店へ買い物に行って、飲料と「なめたけ」をかった。永谷園のお茶漬け海苔がないかなと思ったのだが、ない代わりに「なめたけ」が目に入ったのでつい買ってしまった。売店を出ようとしたところで雑誌売場の「NHKきょうの健康」が目に入って、その表紙の「快適睡眠法」という文句に目を奪われて、つい買ってしまった。

売店を出たところでばったりA君にあった。今日は歯科の通院で来ていたらしい。S君が閉鎖病棟に移ったことをもう知っていて、状況について根ほり葉ほり聞いていった。前に落ち込んだときになぐさめてくれたKさんに、今回は無視されたのが落ち込みが激しくなった原因ではないか、と彼は言っていた。その意見は一昨日の喫煙所でも出ていた。Kさんはちょうど彼の母親くらいの歳で、彼は典型的なマザコンだから、彼女に無視されたことが相当こたえたのだろうか。

昼食前に9月分の入院費の請求書が来た。よかった、8月より2万円以上安い。銀行の残高も気になるが、まだ余裕はある。だが、できるだけ節約を心がけよう。

喫煙所で「一年に二回咲く桜」の名前を教えてもらった。「彼岸桜」というらしい。

午後一番で入浴後、買ってきた「きょうの健康」を読む。カフェインの入ったコーヒーやお茶は寝る5時間以内に飲まない方がいいとか、寝る前1時間以内にタバコは吸わない方がいいとか、そんなこと言われたって、と思うことが書いてある。他にスキンケアの記事も載っていたので読む。こういう情報はとっておきたいが、この前買った健康雑誌もそのまま置いてあり、どんどん本がたまっていくので、これらも必要な記事だけ切り抜いてスクラップし、本体は捨ててしまった。

昼過ぎにホールに行くと、看護実習生と患者たちが卓球をやっている。見ながら少し教えてあげたが、直接相手をしてほしいというので、マイラケットを持ってきて実習生のTさんの相手をする。サーブのやり方も知らない初心者だったが、運動神経はいいようで球への反応がよく、少しコツを教えたらすぐにいい球を返すようになった。ブロックを崩さないように積み上げていくゲームをやっていた他の実習生たちに「見て見て、うまくなったよ」と彼女が言って、少し打ち合ってみせると「ほんとだ~、うまくなってる」と感心していた。ひょっとして私は「人に教える」というのが上手なのだろうか。あまり今までは意識したことがなかったのだが。

15:00で実習生はミーティングに入るので卓球は終わり、私はさぼっていた勉強を始める。新しい参考書に載っている残りの演習問題を全部やってみた。う~む、やはり的確な解答が導き出せない。解答と解説を読むと、それは理解していたのだが、そこが問題の意図だとは気がつかなかった、というパターンが多い。なんとか「出題者の意図」を汲み取るようにしなければ。

16:00の服薬後、主治医から呼ばれて面談する。最近は夜中目が覚めることもなくぐっすり眠れていて、逆に朝になってもぼ~っとして、眠剤が残っているのではないか、という件、外出して雑踏をうろうろしてもあまり疲れを感じなくなり、帰ってきてからも疲れが出ることがなくなった件、人混みでストレスを感じていたのは対人恐怖ではないという念押し、カウンセリングを毎週行うことを決めた件を話した。そして、自分としては傷病欠勤の期間が切れる来年の7月くらいまでに会社へ復帰、というくらいのスパンで治していこうという長期戦を覚悟していることも話し、最初に会社へ出した診断書の期限がもう切れるので、また書いてほしいという旨を伝えた。とりあえず3ヶ月でまた出しておきます、と主治医は言った。

「ところで、心理検査は受けたことありますか?」と主治医が尋ねた。「500問くらいあるマークシートのやつですか?」と聞いたら「そういうのもありますが、ロールシャッハテストとか、そういうやつです」と言う。おお、ロールシャッハテストね、いろんな本で読んだけど実際にやったことはない。そう言うと、「まあ何かの参考になるかもしれませんので、一度やってみますか?」と言うので「おもしろそうだからやってみたいです」と答える。いつになるかわからないが、どういう結果が出るのか楽しみだ。

夕食前Fさんに、私はどこが悪いのか見ててさっぱりわからない。ぜんぜん普通に見える。そう言われた。まあ、この病棟内にいる限りは比較的安定してけっこう元気だし、Fさんは最近入院したので私が落ちたところも見たことないしな。一見どこも悪くないように見えるんだろうけど、でもこの病棟にはそういう人はたくさんいる。

夜、私と同じく山登りが趣味だというK氏と喫煙所ではじめてじっくり話をした。彼はうちの会社もお世話になっている大手メーカーの経理らしく、来年定年だという。6ヶ月入院しているけどまだよくならず、なんとか年内には退院したいらしい。私と同じ主治医で、カウンセラーも私と同じ人だそうだ。いろいろお互い苦労話をした。メーカーでもやはりうつ病は多いそうで、しかも、というかやはり長引く人が多いそうだ。

その後病室に戻って勉強しようとしたが、問題集を広げてもなんだかやる気がしないので、やめてCDを聴いて寝ていた。私は昔から、日頃はこつこつ勉強するのにいざ試験が近づくと急に勉強に身が入らなくなる。なぜなんだろう。高校時代は、定期テストではいつも80番くらいだが実力テストでは10番以内、ということが多かった。

書いているうちに20:00をまわった。ちょっと一服してから、着替えて就寝準備をしよう。

よく寝た。ほとんどぐっすり寝ていた。Wさんが枕元の電気をつけたときに一瞬目が覚めたが、時計を見るとすでに4:30だった。その後すぐにまた寝て、洗面所で音がしてからまた目が覚めた。5:30をちょっとまわったところだった。私は「目覚めのヨーガ」に書いてあったポーズをうろ覚えで繰り返しやってみて、覚醒モードに入ろうとした。途中また眠ったりしてしまったが、仰向けの状態、横向きの状態を左右両方、最後にうつ伏せの状態で猫が伸びをするように体を伸ばして起きた。6:00ちょっと前で、そのまま洗面にいった。洗面している途中に起床を知らせる放送が入った。

朝食後、ドリッパーでコーヒーをいれて一服した。今は7:37。今日も作業療法だ。8:45くらいからストレッチを開始するとして、8:40に病棟に戻ってくるように散歩に出かけるか。散歩を30分とすると8:10に出ればいい。それまでゆっくり音楽でも聴いていよう

8:00過ぎにいつもの音楽堂へ行ってオカリナを吹いていると、若い女性が現れて「それ、なんていう楽器ですか?」と聞いてきたので「オカリナっていうんですよ」と答えた。彼女はよくその辺で寝そべってると聞こえてくるのでなんだろうと思っていた、というようなことを言っていた。

オカリナを吹き終わった後、いつもの山道をぐるっと一周して戻っている途中、海がよく見渡せる丘の上にあるビーチチェアにさっきの女性が寝転がっていたので話しかけた。彼女はよく一緒に散歩に来る友人から「フルートの音が聞こえるよ」と聞いてきたらしい。彼女自身は音大でフルートを専攻していたらしく、興味を持ってきてみたら、フルートの音ではないし、リコーダーでもないし、なんだろうと思って覗きに来たらしい。彼女も病院にフルートを持ってきたかったが、高価だし大きいし、ということであきらめたそうだ。オカリナは小さくてよかった。彼女は「スカボロフェアー」の音を私が間違って吹いていることを指摘してくれた。言われてみると、確かに違っている。歌うとちゃんと歌っているのに、吹くときには間違えていたようだ。教えてもらってよかった。少し話をしてから彼女と別れ、病棟に戻った。

作業棟へ行って基礎データを計り、体力テストをしようとすると、作業療法士が「先に彼に使わせてあげていいですか?」と中年の男性をさして言う。彼の体力テストをいつも私が使っている機種でやりたいようなので「いいですよ」と答える。そう言えば昨日、同じ機種でもう一台隣にある壊れている奴は、液晶表示が見えないだけで、その他はちゃんと動いているので、スイッチを入れて、正しく入力をして、終わった後結果をプリントしたら使えるはずだ、というのでチャレンジしてみた。毎回使っているので入力手順はわかっている。ボタンを確実に押したかどうかも電子音で確認できる。その結果、みごと体力テストに成功した。短い時間で終わったので、また途中で打ち切られたのだが、その割には「6段階中の3。普通」が出た。

昼前、売店に行ってペットボトルのお茶と「週刊アスキー」を買った。その帰り、週刊アスキーを小脇に抱えて歩いていると、婦長とすれ違った。婦長は私が本を持っているのを見て「また本を買ったの?また勉強するの?」と聞いた。私が「雑誌ですけど」と答えると、「じゃあいいけど」と言われた。雑誌じゃなくて勉強する本だとよくない、ということなのだろうか。看護婦は私が試験に向けて勉強をしていることに対して快く思ってないのだろうか。「この患者はあせっている。もっとゆっくりしたらいいのに」と思っているのか。治療上好ましくないのか、他の患者に気を遣わせるので実は迷惑だと思っているのか。今度婦長をつかまえて直接聞いてみよう。

昼食後、主治医がナース室に来ているのが見えたので、ちょっとつかまえて脈拍が高い状態が続いていることを話し、薬の影響は考えられないか聞いてみる。「う~ん、なくはないとは思いますが、めったにないと思います。よくわかりません」という答えだった。気にしなくていいのか、気にした方がいいのか自分でもよくわからない。何か別の病気の兆候だと嫌だなあ。頻脈が初期症状として考えられる病気を疑って、検査を受けた方がいいのだろうか。内科の医者に相談してみよう。

内科の医者は週に一度しか来ないはずだった。何曜日に来るのか聞いてみようと看護婦に聞いたら「火曜日」で、もう来て行ってしまったところだという。しまった~。頻脈が続いている状態であることを看護婦にも改めて伝え、その件で相談したい、ということを伝えてもらうようにお願いしたところ、内科の医者には主治医経由で依頼することになるので、主治医に伝えておきます、と言ってくれた。

午後、ホールでビーズを編んでいるIさんに話しかけてみた。今週末退院するBさんのためにビーズの指輪を3つ作っているという。いろいろと話がはずんだ。いつも暗い表情をしているけど、話すと笑顔が出てきてこっちも気持ちよくなる。その後は喫煙所で別のIさんと話をする。自分の家族のこととか話した。結局親は理解しない。自分たちの責任を認めたくないんだ。そういうことを言っていた。

15:00のシャワーの後、薬剤師が来て今度は副作用の説明をしてくれた。頻脈について聞いてみたら、0.5%くらいの確率で報告はされているそうだが、そういう確率なので副作用を疑うより医者に相談してみた方がいいと言われた。

今度はBさんがビーズを編んでいる。「目が疲れない?神経使いそうだけど」と尋ねると、「でもこれやってると、集中して他のことを考えなくてすむんですよ」そう言った。そうだ、「不安から逃れる方法」の一つには、他のことに集中して不安なことを考えなくてすむようにする、というのがあった。ビーズなんかいいのかもしれないな。女性はけっこうビーズでいろいろなものを編んでいる人が多い。

16:00の服薬まで少し時間があったので、昨日婦長から聞いた「一年に2回咲く桜」を見てきた。本当にサクラだった。もとい、桜だった。こんな季節に桜が見れるなんて、ちょっとびっくりした。なんだか得した気分だ。これで春もちゃんと咲くのだろうか。他にどこかに咲いているのだろうか。

夕食後に婦長をつかまえて、昼間に「また勉強するの?」言われたという件について聞いてみた。私が勉強している件について、医療スタッフとして「好ましくない」ということになっているわけではなく、婦長が個人的に「勉強ばかりしてこんをつめてないかしら」と心配していただけだと言われた。ちゃんと20分おきに、目を閉じて遠くの緑を見て伸びをして深呼吸をして神経を休めている、と話すと安心してくれた。

次の日曜日に試験を受けるので、今は勉強時間は多いけど、ずっと勉強ばかりしているわけではない、ということも話したら、その試験自体に興味を持って、どんな試験か逆に聞いてきた。どうやら婦長自身がコンピュータを使った統計処理やらに興味を持っていて、少しそういう話をした。ここの病院もシステム化して効率があがった、という話を聞いて、私が「そのシステム化のときは、業務内容についていろいろヒアリングに来たんじゃないですか」と尋ねると、「そりゃもう、毎日夜中までやってましたよ」と言う。情報システムを構築するにあたって現場から業務内容をヒアリングするのは基本だが、やはり業務担当者としてもかなり負荷がかかるものなんだなぁと実感した。

連絡会まではCDを聴いて休み、連絡会の後は隣のベッドのSさんとしばらく話をした。Sさんは3泊の外泊から帰って来たのだが、今日用事があって会社に行ったら、行く前にものすごく体ががちがちに緊張して、油の切れたネジのようになってしまったという。「2ヶ月じゃ早すぎるのかなあ」と言うが、焦らない方がいいと私も思った。しばらく鬱についての話や、私がカウンセリングを受けた話などをした。

その後喫煙所に出ていって一服していると、NHKの「クローズアップ現代」で「交通事故で過失致死を起こした加害者の刑罰が軽すぎる」というテーマを扱っていた。今の法律では飲酒運転だろうがスピード違反だろうが、死亡事故を起こしても普通に交通ルールを守って運転していて事故を起こした場合と同じ「過失」としか扱われず、その刑罰は最高で懲役5年だという。しかも、起訴される割合も低く、さらに執行猶予がつく場合も多くて実刑になるのは全体の5%だという。ようやく法律が改正されて、飲酒運転やスピード違反の場合は「過失」ではなく「故意」に近いものとして刑罰が重くなり、最高で懲役15年になるという。早ければ今年中に施行されるらしいが、15年でも軽いと思う。人一人の命を奪って15年だと?

被害者の遺族が泣きながら遺族のことを語っている映像が印象的だった。「人が死ぬ」と、最低5人はその人に関わる人が「心の傷」を受けると何かの本で読んだ。自殺にしろ、故意による他殺にしろ、過失にしろ、「人の命を奪う」ということは、その人だけでなく、その周りの人にも深い心の傷を与える、ということが社会全体で認知されてほしいものだ。

見ているうちに20:00になったので、便通の回数だけ記入して病室に戻り、日記を書く。この後はぼちぼち着替えて就寝準備をしようかな。今日はぜんぜん勉強しなかったけど、まあいいや。

割とよく寝た。途中うつらうつら目が覚めたときはあるが、まあよく寝た方だろう。一回だけ時計を見たら4:30だった。そのときアイマスクがはずれていなかったので、割とお行儀よく寝ていたに違いない。しかし、2枚かぶっていた布団は1枚しかない。もう1枚は横の方に追いやられている。しかも、靴下を履いていたのにいつの間にか脱げている。いや、自分で脱いだのだろうが記憶にない。起床後に探すと、床に落ちていた。それも頭の辺りに。少し喘息気味だ。

S君が今日もおかしい。朝、ホールの窓から飛び降りようとしたそうだ。狂言か本気かわからないが、ずっとおかしい。今はナース室で保護されている。あまり調子が悪いと、特に希死念慮が出てくると、閉鎖病棟に移されてもおかしくはない。

朝食後、ドリッパーで朝のコーヒーをいれて飲んでから、散歩に行っていつものごとく音楽堂でオカリナを吹く。今日も10月中旬だというのに暑くなりそうだ。病棟に帰ってきたら少し汗ばんでいた。風邪が治りきってないせいか、単に暑いからなのかはわからない。作業療法はどうしようか。とりあえず様子を見ながら、行くだけ行ってみよう。調子がよさそうでも1セットでやめておいた方が無難だろう。

作業棟へ行ってとりあえず基礎データを計った後、体力テスト。また途中で打ち切られたが、「6段階中の2。やや劣る」が出た。1が出ると思ったが、病み上がりにしては思ったほど調子は悪くない。たばこを一本吸ってからもう一度やると、今度は「6段階中の3。普通」が出た。お、いいじゃないか。漕いでいると、先週退院したMちゃんが来た。作業療法のために月木と通うらしい。少しピアノを弾いた後、陶芸の方へ行ってしまった。「病棟に顔出すの恥ずかしいから、一緒に来て」というので、11:00に一緒に行く約束をする。

終わった後、陶芸室へ行ってMちゃんが終わるのを待つ。今度は大きな灰皿を作っていて、退院したKさんにあげるつもりだという。みんないろんなものを作っていて、作業療法士の人が作ったオカリナまであった。私が持っているオカリナも、同じように陶器でできたもので、職人の手作りだ。私も自家製のオカリナを作ってみたいものだが、正確なピッチを出せるようなものを作るのは無理だろう。

Mちゃんが11:00少し前に終わったので、一緒に病棟へ戻る。住宅展示場でもらったというHONDAのロボット「アシモ」の人形をS君へのおみやげに持ってきていたが、S君がふらふらと作業棟に現れたときにあげようとしたら、いらないと言われたらしい。代わりにUさんにあげていた。Uさんは摂食障害が回復してちゃんとご飯も食べられるようになり、今月末退院予定だという。MちゃんはK君にも会いたいと言っていたので探したが、今日から外泊で、もう出かけた後だった。ほんの少しの間病棟にいただけでMちゃんは帰っていってしまった。

これを書いているうちに、寝ているS君の主治医が来て「ちょっと話したいんだけど」とS君に言い、面談に行ってしまった。と思ったら看護婦さんと戻ってきて、荷物をまとめ始めている。閉鎖病棟に移るのだろうか。彼は今朝、窓から飛び降りようとした。そういう行動をとればそうなってもしかたないだろう。

ホールに出て喫煙所でWさんから「閉鎖病棟へ10日間移るらしいよ」と聞いた。やはりそうだったのか。それで戻ってくるのだろうか。多少非常識なところはあっても、基本的には「いいやつ」だったので、いなくなると寂しいし、卓球の相手もいなくなる。すぐによくなってくれればいいが。

入浴後、14:00に閉鎖病棟に移るのを待っているS君と喫煙所で話をした。少し落ち着いてきたようだ。「なんであんな馬鹿なことしたんだろう」と悔やんでいる。Hさんが「本当に死のうと思ったの?」と聞くと「死のうと思ったわけじゃないです」と答える。じゃあ、どういうつもりだったのか。自分でもわからないらしい。ちらほらと聞いた話では「みんなについていけない」と言ったとか、「他の部屋で話をしているのを看護婦に注意されたそうよ。それが原因かどうかわからないけど」とか聞いた。確かに彼は他の部屋へ遊びに行って、その部屋の人とよく話をしている。それが「いけないこと」だとはどこにも書いてないし、看護婦から聞いたこともない。それを注意されたからと言って、そこまで落ちるだろうか?まあ、自分の心すらよくわからないのに。他人の心はわからなくて当然だろう。S君は閉鎖病棟に行くのを怖がっている。いろいろ制限が厳しいというのはわかっているから。彼から隠し持っている携帯を預かった。閉鎖病棟に行けば持ち物検査をされるからだ。さっきは10日と聞いたが、「早くて1週間と言われた」と本人は言っていた。果たして彼は1週間で戻ってくるだろうか。

15:00からカウンセリングが入っているので、指定された場所に行く。今日は顔合わせ程度だろう。15:00ちょっと過ぎにカウンセラーが現れて「前の人が少し長引いているので10分ほど待ってください」と言う。しばらくそこで待つ。

順番がまわってきて、改めてカウンセラーと対面する。カウンセラーにしてはよく喋る方だ。自分でもそう言っている。カウンセラーは医者からは「30代の男性」としか知らされておらず、私の病気などについての情報は一切知らない。これは先入観を持たないために意図的にそうしているらしい。まず最初に「なぜカウンセリングを受けたいと思ったのか」を尋ねられたので、3年前から鬱の症状が出ていて、2回会社を長期で休んだのにもかかわらずぶり返したことを話し、今回の入院でいったんよくなっても、またぶり返す可能性があるので、そうならないために自分自身を変えていきたい、そういうことを話した。いろいろな本を読みあさったこと、会社の産業カウンセラーと2年くらいカウンセリングは続けていたが、その関係も煮詰まっていることなども話した。産業カウンセラーに「この会社の仕事が向いてないんじゃない?他の仕事を探したら?」と言われたことを話すと笑って「産業カウンセラーは割と簡単になれるからねぇ。産業カウンセラーだとそういうことも言うのかな」と言っていた。ここのカウンセラーはもっと専門で信頼できそうな感じを受けた。ACの本を読んで「原家族ワーク」をやっていると鬱が入ってきて中止したことも話した。そのワークをやるには、自分の中から出てきたことを誰かと共有しないといけないと本には説明していて、その相手にもなってほしいということを話した。今、そのワークをやるべきかどうかも迷っていることも話した。カウンセラーによると、それは「パンドラの箱を開けるようなもの」で、開けると何が出てくるかわからない。それによって一時的に調子が悪くなることはある。だけどいつかは開けなければいけない。その時期を判断するのは自分自身だという。自分で「大丈夫だ」あるいは「調子が悪くなっても何とかなる」と判断してやるものだそうだ。ただし、やるなら「入院中」がいいと言った。入院中なら、具合が悪くなっても守ってもらえる。実社会へ復帰した後ならそうはいかない。「ところで、そういうACの回復をお手伝いしたようなご経験はありますか」私がそう尋ねると「そんな人ばっかです」そういう答えが返ってきた。信頼できそうだ。

自分がいろいろ本を読んだけど、読んだだけでは何にも変わらない、何か実行に移す行動療法があれば指導してほしい、ということも言った。が、このカウンセラーの方針としては「何も指導しない」そうだ。人から与えられたことは、頭ではわかっても本当に自分で吸収することはできない。だが、自分の中から出てきたこと、つまり自分で悟ったことは身につく。それをどんどんぶつけてほしい、自分は壁打ちの「壁」になるので。そう言った。「自分の中から出てきたこと」とは何だろうと思い、この間の公園へ行ったときのコスモス畑の話をした。「満開を期待すると『これっぽっちしか咲いてない』と残念に思うけど、『一本でも咲いていればラッキー』と思っていると『こんなに咲いている』と思うのじゃないか」と思ったことだ。「そう、そういうことです」カウンセラーはうなずく。よし、これからはできるだけそういうことを自分で「見つける」ことにしよう。カウンセラーは続ける。「そういうことを自分で見つけて、さらにそれを言語化し、人に話すというのが大切なんです」それを聞いて、私が毎日日記をつけている、と言うと「それは大変いいことです」と言われた。当初の目的は全く違っていたが、日記をつけていてよかった。

今回は軽くそういう話をした程度で、最初の1、2回は私のバックグラウンドを知るためにいろいろ質問するらしい。とりあえず毎週月曜日の15:00から1時間、ということになった。

夕方、婦長さん自ら郵便物を持ってきてくれた。DMだった。購読している雑誌の送付先を病院にしてもらったはいいが、DMまで送られて来るようになってしまった。婦長さんによると、「一年に二回咲く桜」が海の見える丘の近くにあって、今咲いているという。そんな桜があるなんて知らなかった。明日にでも見に行ってみよう。「その桜ってサクラじゃないですよね」という文字で書かないとよくわからない冗談は婦長さんに通用しなかった。

夕食後、連絡会まで参考書を読む。はじめに買った参考書の方で、経済産業省が出した各種ガイドラインを読んでいなかったので、改めて読んでみた。この内容を問われる可能性は十分にあるので、よく覚えておかなくては。

連絡会の後は、久々に20:00まで喫煙所で話をした。話題は最初はS君のことで、「彼は甘えている」という点でみんなの意見というか、彼に対する見方は一致していたようだ。彼の幼稚性は多くの人が指摘しているし、今回も「調子が悪いように見えるけど、単にかまってほしいだけだろうから、わざと無視していた」という人がいた。みんながかまってくれないから窓から飛び降りるような素振りを見せたのだろうか。飛び降りると言っても、窓を開けて片足をのっけただけらしいが、そこでTさんがびっくりして看護婦さんを呼んだそうだ。でもホールにいた他の人はみんな知らんぷりしていたそうな。

話題はその後PCのことやらビデオのことやら、マニアックな方面に移っていった。同室のYさんはかなりAVマニアらしく、どこかのメーカーが新しい規格の製品を出すたびにことごとく買っていたらしい。PCは覚え始めたところで、何とかDVから画像を取り込んで編集したいと思っているそうだ。

20:00も過ぎたので、そろそろ終わりにしよう。やっと風邪も治まったようだ。これから就寝準備をしてから、その後は何をしようかなっと。