「脳はなぜ「心」を作ったのか」という本を読んでいたが、半分くらい読んだところでやめた。難しいとか頭がまだ回らないので何を書いているかわからないとかそういうのではない。単純につまらん。読んでてもさっぱり面白くない。期待はずれだった。
著者は東工大出身で、キヤノンで勤務してからアメリカの大学に渡り、触覚センサやロボットなどの研究をしているというバリバリ理系の人。2004年刊行なので15年前か。理系の人が書いた本としてはちょっと古いかな。文学や哲学、心理学と言ったジャンルの学問は10年や20年でそんなにドラスティックには変化しないが、サイエンスの世界はそれくらいのスパンでガラリと変わったりする。さてどんなもんだろうと思って読み始めたのだが・・・。
最初はちょっと論理が稚拙かな、という印象。我田引水的な展開が多い。そもそも第一章で説明される、この本で中心となる用語の定義が意味不明である。「私」と<私>という用語を本文中で使い分け、その違いを説明しているのだが、何を書いているかさっぱりわからん。理系が書いた文章とは思えん。まあ読んでいくと大体のニュアンスで、「ああこういうことが言いたいんだな」というのはわかるが、読んでて「それがどうした」という感じだ。
もう少し科学的な観点から脳の働きを読み解いていくのかと思ったが、そうでもないし、かと言って哲学というわけでもない。なんのエビデンスもなくニューロンの働きを都合よく解釈している。まあそれがその人の立てた仮説であり、それを解説しているのがこの本なのだが、その内容が自分にとってはつまらんからどうしようもない。大学の一般教養の科目だと、試験に出るから著者が何を言いたいか必死に読むかもしれないが、別にそんなものではないし、買った本なら「元を取らなければ」とか思って意地でも読むかもしれないが、借りてきた本である。つまらなかったら読まなければいい。
それにしてもなかなかタカピーな著者だ。ある実験の解説をしていて、
「さて、読者の皆さんはどちらが先だとお思いだろうか。(中略)この順番に決まっている。こうだとお思いだろうか。そう思うのが(私を含めて)凡人の常識だろう。」
なかなか挑戦的だ。「私」を含めればエクスキューズになると思っているのだろうか。