筒井康隆「ビアンカ・オーバースタディ」読了。短いからすぐに読めてしまった。裏表紙には
「文学界の巨匠・筒井康隆が本気で挑む、これぞライトノベル。21世紀の”時をかける少女”の冒険が始まる!」
と書いてあり、ライトノベルのことはよく知らないけどとりあえず読んでみた。
少し読むと、ふむふむ、学園モノで美少女が出てきてエロくて、漫画とかアニメとかゲームとかの世界のような「都合のいい」話が続く。そういうのがラノベなのかな、と思っていたら、なんだか途中からわけがわからなくなってきた。話はどんどんおかしな方向へ転がっていき、いやまあとてもおもしろいのだが、う~んエロいのはいいがグロい、というかこんな残酷なのは「ライト」ではないし、SFはいいとして生命倫理的にはNGな、いや小説としてはありなんだろうが「ライト」ではないだろうし、そしてどんどん話はおかしくなってしまって、結局最後は筒井康隆ワールドになってしまった。なんじゃこりゃ~?確かに時はかけるけど、時をかける少女どころではない。
そして読み終わってから「あとがき」を読む。こんなことが書いてある。
この本にはふたつの読みかたがある。通常のラノベとして読むエンタメの読みかた、そしてメタラノベとして読む文学的読みかたである。
そうか~、つまり確信犯的に「筒井康隆が『ラノベ』を書くとこんなことになるぞ」という意図で書いた、清水義範の書くパスティーシュ的な小説だったんだろう。そしてこんなことも書いてある。
ラノベの読者は多いから、できればこの本を読んだ何分の一かの読者を、わが本来の作品に誘導したいだけなのである。
う~んそれで最後は筒井康隆ワールド全開だったわけね。やっぱ筒井康隆はおもしろい。